1杯のエスプレッソ(長文)

実は、コーヒーが嫌いだった。

子供のころは、親父が豆を買ってきて(ブルーマウンテンブレンドやキリマンジャロ)
手で挽くミルが置いてあり、不規則な仕事をしていた親父は、よく、「コーヒー淹れろ」って兄貴や俺に言っていた。

挽き立ての豆の香り、淹れたてのコーヒーの香りは心地よく、親父に出した後、少し飲むのが習慣だった。

このころは嫌いじゃなかった。

でも、色恋を覚え初めのころ、女の子と行った喫茶店をきっかけにコーヒーは自分の中で「悪」となった。

まず、周りを見渡せば男性は大抵「コーヒー」。
しかも「ブラック」
これがかっこいい。
裏を返せば、砂糖を入れる、ミルクを入れる⇒かっこ悪いこと

飲めば、ただ苦く、家で飲んでいたコーヒーとはまったく違うもの。

しかも飲んだ後、お腹が痛くなり、我慢することで、その子と何を話したか覚えていない・・・

最悪な思い出が、コーヒーを嫌いにさせた。


でも、その気持ちを持ったまま、大人になり、
ホテル、バー、事務機器の営業を経て、ちょこっとアメリカに遊びにいって、21で㈱エフエムアイのショールームに向かうことになった。

当時、飲食に戻るか、ビジネスマンとしてのスキルをつけるか迷っていた・・・。

ショールームの扉を叩き、ドアを開けると、右側に全面大理石でできているハイカウンターがあり、その中で、割腹のいい男性が、黒いベストに蝶ネクタイ、黒く長いサロンを巻いて
カウンターを掃除している

単純に「かっこいい」 
でも、何でマシンメーカーにバーテンダー???

でも自分には関係ない。
なぜならコーヒーを作るマシンは自分には売れない。
なぜなら、コーヒーが嫌いだから。自分の持論で好きでもないものは売れない。自分が認めたものでなければ売れない。と思っていたし、今でも思っている。

でもせっかくのご縁で声を掛けていただいた会社。電話でお断りするのも失礼かと思い足を運んだ。

席に着くと

面接官:「営業としていかがでしょうか?」

俺:「勉強不足で申し訳ございませんが、御社は食品機器メーカーだとお聞きしました。どのような製品を販売していらっしゃるのでしょか?」

面接官:「主に、自社製品としてはコーヒーマシン。それ以外にもオーブンやフードプロセッサーなども扱っていて、最近力を入れようとしているのが、イタリアから輸入し始めたエスプレッソコーヒーマシンかな」

俺:「コーヒーマシンですか・・・」「正直、自分はコーヒーが嫌いでして、自分の嫌いなコーヒーを作る機械を販売する自信がありません」「わざわざお時間を取って頂いたのに申し訳分けございません」

面接官:「いやぁそうは言っても、コーヒーもなかなかおいしいものなんだよ」

俺:「昔から苦手で、どちらかというと紅茶のほうが好きでして・・・」

面接官:「コーヒーマシン以外にも色々なマシンがあるんだよ」「ほらこれだけの商品がある」

俺:「先ほど、もっとも力をいれたいのはエスプレッソマシンとおっしゃっていましたし・・・」


こんな会話をしているところで、先ほどのバーテンダーが一杯のエスプレッソを淹れて持ってきてくれた。

バーテンダー:「君、エスプレッソって知ってるかい?」

俺:「はい。ホテルで働いているときにお客様に提供していましたので」

バーテンダー:「どんなイメージかな?」

俺:「濃い、苦い、量が少ない、高い!これが私のエスプレッソのイメージです(笑顔)」

バーテンダー:「よく知っているね~。その通りだよ(笑顔)本場のエスプレッソは君が思っている
        以上にもっと量が少ないんだ。だからもっと濃いんだよ」
         「ほら」
         「これが本場のエスプレッソだ」
         「飲んでごらん」

俺:「嫌ぁ結構です。本当にコーヒーが苦手で・・・特に苦いのは・・・」

バーテンダー:「はは そうだよね。じゃぁ砂糖を入れてよくかき混ぜてあげるよ」

俺:「!!!」(すごい量の砂糖!!)

バーテンダー:「そうだよね。日本では砂糖を入れるのはかっこ悪いことだもんね。でもイタリア人
        の大半はこうやってたっぷりの砂糖を入れて、よ~くかき混ぜて飲むんだよ」
        「はい、どうぞ!」

俺: いったって少ないし、飲んではいやっぱり苦手でしたって言えばすむことだし・・・
   「頂きます」


俺:!!!!!!「うんまい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

すごい衝撃だった。今までのコーヒーのイメージがまったく変わる一杯!!
コーヒーの塊を口に放り込んだ感じで、甘さと苦さのバランスとコーヒーの香りが口いっぱいに広がった。

俺:「すごい!美味しいです」「コーヒーがこんなに美味しいものだとは思いませんでした」

  「でも、入ったときからお聞きしたかったんですが、なぜ社内にバーテンダーがいるのです     か??」

面接官:「彼はバーテンダーではなくってバリスタっていう職業なんだよ。もちろんお酒も扱うんだ
     けど、大きな違いは美味しいエスプレッソが淹れられることかな」

俺:「バ バ バリ もう一度御願いします」

面接官:「〔バ・リ・ス・タ〕だよ」

俺:「バリスタ・・・。バリスタってどのようにすれば成れるのですか??」

面接官:「まぁバリスタって言っても、今は「彼だけ」だから、なんともいえないけど、
     彼はジェラートの第一人者で、イタリアでも勉強してきたんだよ」(横山さんねぇ)

俺:「私もバリスタになりたいのですが・・・」

面接官:「やりたいならこの会社が一番の近道だよ。だってバリスタは彼しかいないし、
      実はアンテナショップを作る予定で今一人イタリアに行かせてるからね」

俺:「バリスタになりたいので、その方向性で入社させてください」

こうやって、㈱エフエムアイに入社した。

そして、自分に課したことが、いくつかあった。

1、エスプレッソを毎日入れる
2、ミルクを毎日泡立てる

社内営業で、いかに自分がバリスタになりたいかを多くの方に語り、あまった豆があれば頂いて、ベストなセッティングのポイントを探る。

正直、社内で誰も興味を持っていなかったし、皆快く協力してくれた。

そして、自分なりにフォーミングも理解し、エスプレッソのグラインダーセッティングも豆の特徴で迷わずできるようになって、いつの間にか、他の営業マンのプレゼンで自分がプレゼンをするようになっていた。

  仕事は「営業」⇒「マーケティング」をやってました。 

そして色々ありましたが、会社から「イタリア行って来い」といっていただき、
帰国後は、コンサルティング室に移動。

業務内容は、セミナー年間150本、そして空いてる時間はジェラートショップやカフェの立ち上げ。
それぐらいの時期にスターバックスが日本に上陸。シアトル系の店が出店ラッシュ。

だから、メディアにも注目され、雑誌やTVからの話も回ってきた。
(当時バリスタって、根岸、横山、野崎しかいなかったし・・・)
休みはほとんど無かったけど、全然苦じゃなかったし、スッゴク楽しい時間だった。

そして、自分でリアルなイタリアンバールを具現化したいって思って約9年前に独立。
今ではありがたいことに、国内外からのコンサルティングの話や、出店、講義、メディア、新しいビジネス、それ以外にもモデル、イベントなど色々なお話を頂いている。

そうそう、当時の上司は先ほど出てきたバーテンダー「根岸 清」氏
普段はくだらない親父ギャクしか言わない心底明るいおじさんだけど、本当にこの人には迷惑を沢山かけたし、かわいがってもらった。(今でもねぇ)

でもでも、本当に尊敬できる方。

この人との出会いが自分の人生を変えた。

この人に入れてもらった一杯のエスプレッソで人生が変わった。

自分がやってきたことを努力というのは好きじゃない。周りの人や環境が自分を育ててくれたと思うし改めて感謝したい。

今回は本当に長いなぁ~。
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  by barista-nozaki | 2010-10-19 22:51

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